
キネシオロジーという言葉は、ギリシャ語の運動を意味するkinesisからきていて、生体力学という意味です。
元は古く、ギリシャのアリストテレスの時代に運動を研究する学問として、解剖学と力学に焦点をあてて、発展してきました。その後、筋肉の収縮はインパルスによって起こり、身体の運動は筋肉への電気的刺激の結果であることがわかり、そのインパルスは中枢神経の制御のもとで、行なわれるという神経生理学の理論が確立されました。それにより、人体を含め、動物の神経システムの構造が明らかになりました。

当院が行なうキネシオロジーの基礎となっているAK(アプライドキネシオロジー)「応用運動機能学」は、このような理論を基に、カイロプラクティックドクターでもあった、ジョージグッドハート博士が、さらに発展し、治療体系として確立しました。この治療体系は、博士の日々の臨床から生まれました。
当時、カイロプラクティックのテクニックでは解決できない症状に対して、カイロプラクティックの治療法にとらわれないで、原因を追究するために、様々な治療方法(中国の鍼灸法、リンパ廃液法など)が試され、さらに栄養学、神経生理学、生理学、解剖学などを研究し臨床が重ねられました。その結果、様々な症状に対応するには、一つの治療方法では難しいという結論に至りました。それは、症状が同じであったり、似ていたとしても、症状を引き起こす原因は、細胞レベルの機能の問題(臓器、リンパ血液循環の問題など)、構造的な問題(筋肉や靭帯の機能の問題、硬膜の問題など)やエネルギーレベルの問題(経絡の流れの問題など)、感情や心理的な問題など、多義にわたり、その原因に対する治療方法が必要になるからです。
このような臨床で得た事実から、個々によって異なる症状を解決する為に、筋力検査で症状を引き起こす原因を判別し、その方の状態にあわせた治療方法を施すという治療体系が生まれたのです。
この、筋力検査をしてその方の状態を調べるという方法が、日本ではオーリング検査という形で広まりましたが、この筋肉を使う検査方法は、様々なことが調べられる事や健康を増進、維持する為に有効なことから、治療だけでなく一般の方々にも出来る簡単な方法として、タッチフォーヘルスという名称で広まり、これをキッカケに現在様々なキネシオロジーが世界で広がっています。
実際にこの筋力検査により、その方に合わない食べ物、飲み物などの食材、化粧品、フラワーエッセンスなどの何かを抽出した物などが判別できます。この検査方法が、我々にとって有益であるという証ではないでしょうか。
身体の症状と心理的な問題は密接に関係しています。
現在のようなストレスが多い世の中になって、その影響は、とても大きなものとなっています。
私達がストレスを感じると、体はストレス状態に適応しようとして、ある反応をします。
ストレス回路と言われる、ストレスに適応する為の身体システムが働きます。脳の視床下部から脳下垂体にホルモンを分泌し、今度は脳下垂体からホルモンが分泌され、腎臓の上にある小さな臓器、副腎に刺激を与え、副腎から副腎皮質ホルモンを分泌します。これにより、肝臓でタンパク質の糖化を促進して、血液中に糖を放出し、血糖値を上げ、活動状態に備えます。又、アドレナリン、ノルアドレナリンというホルモンも分泌され、血圧を上げます。これにより、現在のストレス状態から瞬時に活動レベルをピークにして、適応する事が出来ます。
このような一連の身体の反応には、感情が大きく関係しています。もともと、生物は生命が脅かされるような危険に会えば、ストレスを感じて、その危険や不安を乗り越えようとするようにできています。この時、不安、恐れ、怒りなどの激しい感情が起こり、それによって視床下部からホルモンが分泌され、先ほどのストレス回路が活動し始めます。
問題になるのは、このストレスを感じて、このようなネガティブな感情自体を感じる事ではなく、持続的にこのような感情を抱いてしまうことにあります。たとえ、その時にネガティブな感情を抱いたとしても、その場で終わりにすれば、一時的な嫌な事ですみます。しかし、度々このようなネガティブな感情を抱くことがあり、長期的な状態になってしまうと、先ほどのストレス回路が常に活動し、アドレナリン、ノルアドレナリンの分泌は、血圧を常に高い状態に維持し、心臓に大きな負担をかけます。副腎皮質ホルモンの分泌は、分泌量が多くなる事で、免疫力が低下し、癌などの病気になりやすい状態を作ってしまいます。どちらも、交感神経緊張の状態で、活性酸素を増大させることにもなり、この事も病気の原因となります。
このようなことから、学校や職場の人間関係で、毎日のように不安や恐れ、かなしみや怒りなどのネガティブな感情を抱き続けることは長期的なストレス状態になり、体にもたえずダメージを与え続ける事になります。
上記のようなことが起きてしまう、環境にいる方はどうすればよいのでしょうか?
ネガティブな感情自体は、ストレスに適応する為に、必要な感情なので、その感情を感じる事が悪い事ではありません。
ある環境での人間関係で、常にネガティブな感情を抱き続けることに問題があるのです。
不安を感じて、それによって悲しむという感情に移行して、泣いて、涙を流すという、ひとつの感情に留まっていない状態である、感情が流れている状態になる事です。このような泣いて涙を流すことには大きな意味があります。
科学的には不安という状態が、交感神経緊張状態にあり、長くこの状態を続ける事は、自身の健康に悪い影響を与える事になり、この状態から逃れる為に、自らこのような行動を起こすとも言われています。これは、副交感神経反射と言われ、自分の自律神経のバランスをとる為、無意識に行なっている反応と言われています。又、笑うという事も、これと同様の作用があると言われ、意識的に笑ったり、泣いたりする事は、副交感神経優位の状態にし、リラックス状態にします。泣いて、吹っ切れることが、病気にならない為にも必要なのです。
このような、一連の感情の流れの重要性は、中国医学でも言われており、昔から感情と健康が密接に関係していたことが分かっていたと言えます。
人によって、性格的なものもあり、ストレスを感じやすい人もいますので、なかなか思いっきり笑ったり、泣く事が出来ない方もいるとは思います。
おとなしく、神経質な人は、日ごろから自分の感情を抑えている事もありますので、そうなると感情を面に出せないでいる方もいます。
このようなことは、性格だからしょうがないと思っている方もいるかもしれません。しかし性格は、遺伝的な気質だけでなく育った環境や生まれた土地の風土などにも影響されるといいます。このようなことから、性格は、先天的なものだけでなく、後天的なものと半々で形成されるというのが、現在定説です。遺伝的なものを変えることは無理でも、後天的な育った環境による思考の仕方や知らず知らずのうち内に作られた、自分の思い込みなどは、意識が変わることで、変えることが出来るといいます。環境が人を変えるということは、聞いた事があると思います。
スポーツ選手がメンタルトレーニングをすることで、好成績をあげている事は、現在よく知られています。
この意識を変える為にとても大切であるとされている部分が、脳の前頭前野という頭の前側のおでこの部分です。
この部分が重要であると言われている背景には、脳科学的に気分や感情をコントロールするには、情動の中枢である扁桃体などの大脳辺縁系と、それを制御する前頭前野の働きのバランスによって行なわれている事が分かってきたからです。扁桃体はポジティブな体験よりも、ネガティブな体験に対して敏感に反応するとされていて、ネガティブな体験を多くしていると、扁桃体はいっそう過敏に反応するようになると考えられています。
一方、それを制御する役割があるのが、前頭前野です。この部分は物の善悪や損得の考え、不利な行動にブレーキをかけ、有利な行動にアクセルを踏む役割を担っています。この部分が、なんらかの要因でうまく働かなくなると、情動をコントロールすることができず、一瞬の激情の為に、不利な行動を衝動的に行なってしまうことになりやすくなると考えられています。
実際、危険な自殺行動を繰り返す人では、この領域の活動が低下しているとの報告もあります。扁桃体が過剰反応しやすくても、前頭前野がしっかりしていれば、このような事は回避出来ることになります。しかし、ネガティブな体験を多くした人は、扁桃体が過剰な反応を起こしやすいだけでなく、前頭前野の機能が、低下していることが多いという報告もあります。これは、扁桃体の過剰な興奮が、前頭前野の発達に影響を及ぼす為と、考えられています。又、薬物、アルコールはよけい前頭前野の働きを低下させてしまうことが多いと言われ、ネガティブな感情や気分を紛らわす為に、薬物乱用やアルコールに頼るのは悪循環を作り、いっそう衝動的になり、感情のコントロールも難しくなると言われています。
このことから分かるように、前頭前野の機能を高めることが重要であります。
キネシオロジーでは、前頭前野を活性化する方法もあります。身体の問題を治療する過程で、ネガティブな感情を抱き続けることは、ストレス回路に影響を与え続け、やがて身体の問題にも発展することが大きな問題である事がわかり、それをケアする方法も発展していきました。
前頭前野を活性化することは、扁桃体をコントロールするだけではなく、ポジティブな思考、新しい選択肢新しい代替案を生み出すことなど、新しい考え方をする上でも、必要であるとされています。
性格を変えようとするのではなく、あらゆる選択肢があり、新しい案を考える思考を作り出し、今までの思い込みを変えることが、ストレスに対処する方法であると思います。
性格のことで言うと、おとなしく、悲観的な人でもその悲観性が、慎重な行動となって表れ、危険を冒さず回避し、安全に生きることが出来ている事も言えます。悲観的な性格だからといって、必ずしもマイナスに働くわけではないと思います。